トップページ | 2007年12月 »

2007年11月

2007年11月23日 (金)

其之七

城北高校。青嵐高校と同様に有名な進学校だ。

青嵐と違って、城北高校の歴史は浅い。そのため文武ともに力を入れ、そして台頭してきた高校である。

特に、男子剣道は、ここ近年は県内で、団体・個人ともに優勝という輝かしい成績を残していた。

「おい、健太はどこに行ったか知らんか??」

城北高校剣道部顧問、青山哲史は、道場の掃除をしていた一年生部員に聞いた。

「石川先輩なら、青嵐に偵察に行くって言ってましたよ。」

「ふーん・・・そうか。そこまで、念を入れるとは、アイツも抜かりないな。今年も優勝まちがいないだろう。お前らも健太"先輩"を見習えよ。」

「はい。僕、あの人に憧れて入部したんです。」

一年生は、一旦掃除をしていた手を止め、目を輝かせながら言った。

「おお、そうかそうか。頑張って城北の名を轟かせるような選手になってくれよ。ガッハッハッハ・・・。」

「はいっ!」

力強く返事をしたその輝いた目は未来の自分を思い描く希望に満ちたもののようだった。

---------------------------------------------------

「はあ、はあ、はあっ・・・・。何気に遠いな・・・。」

自転車のペダルを漕ぐ足を一時休め、自販機のスポーツドリンクを飲み干した。

石川健太は、城北高校剣道部主将だ。前大会、決勝で三村俊介を下し、見事優勝した。

三村俊介の剣を「柔」とするなら、石川健太の剣は「剛」といったところだろう。

その突進力と形相から「鬼人」あるいは「豪剣」と呼ぶものもいた。

対して、俊介は流麗な身のこなしと容貌から「剣聖」と呼ばれることもあった。

健太は、今まで俊介に負けたことはなかったが、自ら偵察に赴くほど俊介を買っていたのだろう。

しばらくペダルを漕ぎ続けると、ようやく目的の場所へと辿り着いたようだ。

「っしゃあ、やっと着いたぁ!」

健太は息を整え、青嵐高校の門をくぐった。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年11月22日 (木)

其之六

「・・・・瑞樹、行く?」

「え?オレ??他のヤツにすればいいんじゃ・・・?」

僕はそういった合コンみたいな集まりは苦手だった。

「俊介とかカズ連れて行ったら、ミキちゃん取られそうじゃん。」

なるほど、そういうことか。

たしかに、俊介と和也には、人を惹きつける魅力、つまりルックスがある。

そうすると、特に取り柄もない僕しか残ってないわけだ。

それに、そういう場に慣れてない僕なら、自分が主導権を握れるといったトコなんだろう。

「・・・んじゃ、行かせてもらうよ。」

僕は少し迷って、返事した。

スマイリーに協力してやるのもいいかな、なんて思ったんだ。

「ミキちゃんって名前なのか、あのコ?んじゃ、オレなるべくアシストするようにするから。」

「おお、瑞樹。よろしくな。今週の土曜だから。」

スマイリーは嬉しそうに白い歯を見せて言った。

えらい急な話だな。まあ、日本史の勉強の息抜きにはなるか・・・。

次の授業のベルが鳴り、僕らはそれぞれの教室へと足を向けた。

--------------------------------------------------

人波が午前の授業終了の合図によって、一斉に押し寄せた。

食堂は、人で溢れかえっている。

僕と和也はプラスチック製のトレイを持って、行列に並んだ。

「お、俊介!」

僕は既に昼食を取っている俊介に向かって手を振った。

どうやら気付かないようだ。

俊介の横には女の子が座っていた。

俊介と付き合っている彼女らしい。俊介はそういったことを僕らには言わない。

でも時々、女連れの所を見かけるので、皆知っていた。

なぜ言わないのかは分からないが、他の皆に女っ気がなかったこともあるのだろうか。

「まあ、彼女がいるみたいだし、邪魔するのはよそうぜ。」

和也はそう言って、お気に入りのうどんの食券を買った。

僕もまた頷き、ラーメンの食券のボタンを押した。

---------------------------------------------------

僕らは早速に昼食を終わらせ、体育館へと急いだ。

休憩時間もそんなに長いものではないからだ。

少し重い鉄扉を開くと、もうそこには、スマイリーと谷本が立っていた。

「遅いよ。」

「悪い、悪い。速攻で喰ったつもりなんだが。」

「俊介は?」

「あ、さっき食堂で見かけたけど女連れだったんで、今日は来ないんじゃねぇ?」

「ああ、翔子ちゃんな。」

スマイリーは知っていた。

聞いてみると以前一緒に遊びにいったことがあったみたいだ。

「翔子ちゃんっての?あのコ?」

「ああ、でも皆に言うなって言われてたんだった。いけね・・・。」

「別にいいよ。皆知ってるって。何度か見かけたしな。名前までは知らんかったけど・・・。」

「まあ、アイツに彼女いないってほうがおかしいもんな。」

「そりゃ、そうだ・・・って、和也だっていてもおかしくないぞ。」

「オレは一度イタイ目みてるから、当分作るつもりないんだ。」

和也はそう言って、手にしたバスケットボールをゴールに向かって投げた。

ガツーン!バサッ!!

ボールは一度ボードに当たり、ネットを擦りくぐり抜けていった。

「お前って器用なヤツだと思ってたけど、女では失敗してんだな。」

「まあ、皆誰もが一度は通る道だと思うよ。」

そう言う和也の笑顔が、僕には、やけに大人びて見えたんだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月21日 (水)

其之伍

「カズ。ちょっと日本史教えてくんない?」

僕は、和也に頭を下げ、頼んだ。

「ん?いいけど、何で?お前が勉強するなんてめずらしいじゃん。」

「井上。あの時、カチンと来たんだよね。で、全教科ってなるとムリだから、日本史だけでもアイツ見返したいんだ。」

「お前、そんなに熱いヤツだっけ?」

和也は笑った。

「ま、いいよ。オレも期末に向けて、勉強しないといけないしな。放課後、図書館ででもやるか。」

「悪いな。でも部活が忙しいっしょ?」

「いいよ。もうオレたちは、引退っ。どうあがいても、ムリ。俊介は違うけどな。アイツは今回優勝しちまうんじゃね?そんくらい気合い入ってるみたいだから。」

和也は、自分の力、他人の力を判断でき過ぎてしまうみたいだ。だから、ちょっと冷めたトコロがある。

でも頑張ればもっとイイ成績が残せるような気がするんだけど・・・それは、勉強しなくなった僕にも言えることなんだろうが・・・。

互いにどこか冷めた視点を持ってるのが僕らを仲良くさせたのかもしれない。

「そういえば、スマイリーどうなったんだろ?気になんねぇ??」

「お、そうだ。行ってみよう。」

僕と和也は、二、三時限の間の休憩時間に、3-Cから、スマイリーのいる3-Gへと廊下を駆けていった。途中、教師に怒鳴られながら・・・・。

----------------------------------------------------

「スマイリー、どうだったん??」

僕は、急いで走ってきたために弾んだ息を整える間もないまま、たずねた。

あいかわらず、スマイリーの顔は、笑顔だったが、それで判断は、つかない。

「へへっ。なんとか遊びに行く約束取り付けたぞ。まあ、人数がいれば、って感じだけどな。」

スマイリーは相変わらずの笑顔で、僕らに言った。

「おお、マジで!?すげーッ!快挙じゃん!まずは、大人数から。で、徐々に仲良くなっていけばいいじゃんかー。グループ交際かあ。いいなあ・・・・いいよなぁ。」

谷本だ。なにやら妄想を膨らましているらしい。

僕たちが来るより少し前に自分のクラス3-Dから来てたみたいだ。

「って、ことはオレたちも!?」

「ああ。とはいっても、向こうは3人で来るみたいだ。」

3人ってことは、スマイリーお気に入りのショートのコと、隣にいたもう一人のコ、あと、もう一人連れてくるみたいだな。

「誰を連れて行こうか迷ってんだ。」

スマイリーはこっちの面子を考えているみたいだった。

「お、オレ、オレ、もちろんっ。お願いしますよー。吉田さまぁ。」

普段とは、すごい変わりようだ。谷本はこういう時、我先にと名乗り出てくる。

「わかった。わかった。んじゃあ、あと一人は・・・。」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月20日 (火)

其之四

「ところで、明日から昼休み、どうするよ??」

「さすがにもう剣道場には忍び込めないよな・・・」

「外で野球は?」

「却下!グランドまで出るのダりぃ・・・貴重な昼休みやし。」

「体育館で、バスケでもしようぜ。」

「ああ、そうだな。」

「いいんじゃない。」

「で、ガラス代だけど、スマイリーだけに払わせられんよな・・・連帯責任っていうヤツ?」

「明日、皆から徴収すっから。」

「ん、わかった。で、お前・・・・使うなよ。」

「わっ・・・わかってるって。」

「なんで、そんなトコで、どもるんだよ。」

「ワッハッハッ・・・!!」

「スマイリー、いいなあ・・・。もう片方のコでもいいから、紹介してくれよ。って、いうより合コンセッティングしろ。」

「まあまあ、待て待て。オレが今晩、距離縮めっから。」

「期待してるよーん。吉田さまぁ。」

「大丈夫だろーな・・・・。」

「つーかオレたち、いつまで、ココに立ってなきゃいけねーの??」

「お、瑞樹。井上が来んぞっ。」

----------------------------------------------------

職員室の方へ向かって、前方から歩いてきたのは、僕のクラスの担任の井上誠だった。

井上は、日本史を受け持っている。ちょっと嫌な先生だった。

井上は、僕らを見るやいなや、

「沢井、沢村、お前ら何やってんだ!三年にもなって、恥ずかしくないのか??」

「沢村、特に、お前の日本史、何点だった?30点なかったろ??こんなことばっかやってるから、あんな点取るんだよっ!そんな暇があったら、勉強しろ!!」

僕は、ムッとした。たしかに正論だが、こんなトコでテストの点を大声で言わなくてもいいのに・・・。

高校に入学した時点で、おちこぼれの烙印を押された僕は、腐って、まったく勉強というものをしなくなった。そんな点を取ってしまうのは当たり前だった。

しかし、なぜか・・・「見返してやりたい」・・・そんな気持ちが沸いてきた。

井上は、去っていったが、場の雰囲気は、少し悪くなった。

でも、ここで、スマイリーは僕に言った。

「大丈夫だって。オレも日本史、20点くらいしかなかったし。」

皆、笑った。僕も少し笑顔をとり戻せた気がした。

僕には勿体無いくらいのヤツらだ。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

其之参

「何見てんだっ!」

僕らが並んで立っているのを遠巻きに見ている連中に向かって、武は怒鳴った。

武は竹刀を投げてしまった張本人だ。

しかし、彼の顔は生来、「いつも笑っている」かのようで、そのせいで「スマイリー吉田」とか「スマイリー」なんて仇名で呼ばれていたりした。憎めないヤツだ。

正直、その表情は怒っているようには見えなかった。

そこへ下級生と思われる女の子二人組が横切った。すれ違いざま、クスッと微笑んで。

「・・・・惚れた・・・・。」

武はポツリと洩らした。

「これで何度目だよ!?また相手にされないって。」

沢井和也が呆れた顔で言った。

和也は、僕と同じクラスだ。出席番号が並んでいることから仲良くなった。

和也は、この五人の中で、一番、頭がキレる。だが、こんなバカ騒ぎにも参加してくる変わったヤツだ。

「行かなきゃわかんねーだろっ!」

スマイリーはすぐさま、彼女たちを追いかけた。

彼の戦績はもちろん惨たんたるものだったが、この行動力は見習うべきものである。

----------------------------------------------------

しばらくして、スマイリーは僕らのもとへ戻ってきた。

あいかわらずの笑顔だったので、遠目からその結果は分からなかった。

「やったぞ!おい!メアド、ゲットしたっ!!」

「ウソッ!?マジで???」

僕らは一斉に声を吐き出した。

「どっちのコよ??オレ、あのショートのコ、可愛いと思ってたんだ。」

谷本正樹がスマイリーに聞いた。

「おい、それは都合よすぎだろ・・・」と内心、僕は思った。

谷本は小柄で黒縁のメガネをかけていた。すばしっこいヤツで、剣道場から逃げるのもコイツが一番速かった。でも芋づる式でバレてしまったワケだが・・・。

すこし、利己的なトコもあるが、その愛嬌ゆえかコイツも憎めないヤツだった。

「ショートに決まってんだろ。」

たしかに、あのクスッと笑った表情に、一瞬で虜になるのも無理はない。

多分、僕らは皆そう思っただろう。もう片方のコもそんなに悪くはなかったけど。

スマイリーの笑顔は更に笑顔で溢れているように見えた・・・

いや、本当のことを言うと、よく分からなかった。これは内緒だ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月17日 (土)

其之弐

青嵐高校。県下でも五本の指に入る、進学校だ。

僕は、そこの3-Cに籍をおいている。青嵐高校は、僕の出身中学でもある叶中学の近くにある。

どうしても行きたいわけでもなく、近いという理由だけで青嵐を選んだのが運の尽きだ。

中学の成績は、中の上。しかし、青嵐では、最低ランク。400人いる同級生の中でも下から数えた方が早い。

いわゆるおちこぼれというヤツだ。

成績はそんなに変動もしないまま、もう三年生になってしまった。

----------------------------------------------------

僕たちは、ガラスが割れた後、すぐさま、その場から逃げ去ったのだが、

犯人はたやすく見つかってしまった。

剣道場はちょうど食堂の二階にあり、昼食時に、その前を全力で走ってる人間がいれば確実にそれは犯人だ。

僕ら五人は、放課後、職員室に呼び出された。

「また、お前らか・・・三年生にもなって、こんな騒動起こすなよ!」

「ん?お前は剣道部じゃないな。剣道部じゃない人間が剣道場に・・・」

唯一、剣道部ではない僕のことを言っていた。

「すんません、キムっさん。コイツは、オレが誘ったんです。オレの責任です。」

声を荒げていた木村和己。通称キムっさん。コイツは剣道部の顧問をやっている体育の教師である。

僕はコイツの授業を受けているが、僕の顔と名前が一致するわけもない。

ほぼ半分のクラスを受け持っているし、それに覚える気も全くないからだ。僕の存在などその他大勢のうちの一人にすぎない。

割って入ったのは、俊介だった。俊介は、剣道部に所属しており、県の大会でも上位に食い込むほどの実力だ。何気にキムっさんのお気に入りだ。

「三村か・・・・うむぅ・・・・・・・まあ、仕方ない・・・。でもお前ら、ガラス代だけは弁償しろよ。それと職員室の前にしばらく立っとけ。」

キムっさんは自分の席へと戻って行った。

「すみませんでしたァー!」「・・・でしたァー!」

僕らは大声で謝って、職員室を出、その前に並んで立った。

案外すんなり許してもらえたのは拍子抜けだった。

俊介は、親指を立て、舌を見せ、僕に、はにかんでみせた。

僕もまた、それに返すように、親指を立て、微笑んだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月15日 (木)

其之壱

「どぅらあぁぁっ!」

ガムテープを丸めて作ったボールを全力で投げたのは、沢井和也。

パシーンッ!!

竹刀をバット代わりに、谷本正樹はするどく振りぬいた。

その細い真芯で、とらえた打球は左右間を鮮やかに抜けた。

とはいっても、ここは、剣道場。

僕らは、毎日のように昼休みに集まっては、馬鹿げた遊びで時間を潰していた。

「次は、オレの番だね。」

僕は、沢村瑞樹。別に剣道部の部員でも何でもない。

ただ、剣道部の連中とウマが合ったのだ。大概、昼休みには、五、六人が集まっていた。

そうゆう僕も竹刀を振りぬき、ヒット性の当たりを叩き出した。

次の打順は、三村俊介。僕が一番仲がよかったのが、コイツだ。

中学の頃からの付き合いで、当時は丸坊主で、生徒会長。真面目なタイプの典型だった。

ただ、高校に上がってからは、髪を伸ばし、茶色く染めていた。

元々、顔の造りは良く、剣道で鍛えたその体は見事な逆三角形で女子の間ではよく噂されるほどだった。高校デビューといったヤツだ。

俊介も鋭い当たりで初球を打ち返した。さすがの運動神経だ。

吉田武の打順でそれは起こった。

和也の渾身の球は、武のスイングを見事かいくぐり、ボールは壁に当たった。

その時、武の手から竹刀がスルリと抜け、勢いよく、窓に突き刺さってしまった。

ガッシャーーーーーーーン!!!!

「やべっ!逃げろッ!!」

ガラスが割れた音に、野次馬が群がりだした。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

悲しみは雨のように僕の心に打ちつける。

たとえそれが降り続けたとしても、止む時が訪れる

というのなら、それを待つしかないのかな?

君は雨宿りさせてくれるかなぁ

もしそうなら、

この世界がどんなに醜くても、輝いて見えるのに・・・

| | コメント (1) | トラックバック (0)

トップページ | 2007年12月 »