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2008年1月

2008年1月22日 (火)

其之拾伍

そして、僕らはボーリング場を後にし、その「サン・プロジェクト」内にあるカラオケボックスに行くことにした。

超定番な流れだ・・・。

ボックスの一室に入り、順に好きな曲を入れ僕らはカラオケを楽しんだ。

まずは、スマイリーがワイルダネスの【ハリネズミのブルース】を大音量で声を張り上げ歌った。

正直、うまくはなかったが、これで一気にみんなのテンションがアップした感じがした。

スマイリーは、さすがに、こうゆう盛り上げが上手い。机に飛び乗り、みんなを煽り、サビを大合唱した。みんなスゴイ拍手をしたものだから得意気な顔で笑った。

次は、谷本だ。コイツはマイクを握ったら離さなそうなタイプだが、実は歌が苦手らしい。

ビジュアル系ロックバンド、ジュブナイルの【フライ・アウェイ】をなんとか歌いきった。

谷本は、そそくさと僕にマイクを預け、また陽子ちゃんと話し始めた。

そして、僕が歌う曲を決めかねてたところ、

藍ちゃんは僕に微笑みながら言った。

「わたし、チェスターフィールドが好きなんだ。瑞樹さんは?」

実は僕は大の音楽好きで、そのきっかけが、チェスターフィールドだった。

とある店のスピーカーから流れてきたその繊細な曲に凄い衝撃を受けたんだ。

それからというもの、僕はチェスターフィールドのCDを買い漁り、毎日のように聴いては、それに合わせて歌ったものだ。

そして、姉に言われたのが、「みっちゃん、チェスフィーの緋村さんに声そっくりね・・・。」という一言だった。

それからだ、僕が調子に乗ったのは・・・。そう、カラオケは僕が得意な分野だ。

でも、いまだに仲間内でカラオケに行ったことはなかった。なぜか気恥ずかしい気もあったからだ。

つまり、スマイリーや谷本が僕の歌を聴くのは初めてだったんだ。

「え?マジで??オレも大ファン!!CD全部持ってるもん!!」

僕は目を輝かせながら、藍ちゃんに言った。

「えー??ホントにー!??わたし、【ユメノカケラ】が好きー!歌ってー。」

藍ちゃんがそう言うものだから、僕はついリモコンで、【ユメノカケラ】を選曲してしまった。

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2008年1月21日 (月)

其之拾四

「あの時、みなさん職員室の前に立たされてましたよね。」

美貴ちゃんが笑顔を浮かべながらそう言うと

「いやあー、恥ずかしいな。実は、みんなで遊んでて剣道場の窓ガラス、割っちゃったんだよね・・・オレが。」

本当はスマイリーが割ったのだが、僕がかぶることにしておいた。

いや、こんな些細なことで、どうにかなることはないとは分かっていたが、今日はスマイリーをサポートしてやらないと、ってことで。

「あはは・・・・。それでだったんですね。ウチは進学校で、立たされるって珍しいですよね。で、何をやったのかなって、二人で話してたんですよ。」

「まあそれで、みんなと知り合えたわけだし、オレらも立たされ甲斐があったってもんだよ。」

スマイリーは満面の笑みで言った。

僕らはファミレスで自己紹介やいろんな雑談をしながら、昼食をとりなんとなく打ち解けた雰囲気になった。

そして、その後ボーリングをすることに決め、近場のボーリング場「サン・プロジェクト」へと移動した。

「それじゃ、男女ペアを作って勝負しようぜ!」

谷本が言い出した。

「んで、一番負けのチームは、全員のゲーム代、ジュース代払ってもらうからねー。」

紙を取り出し、あみだくじを書き、ペアを作ることにした。

当然、悪知恵の働く僕らだから、スマイリーと美貴ちゃんが同じペアになるように裏工作はしてあったのだが・・・。

そして結局、スマイリー・美貴ちゃんチーム、谷本・陽子ちゃんチーム、僕・藍ちゃんチームに分かれて、ボーリング勝負をすることになった。

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パッカーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

スマイリーは得意気に拳を握り、「うっしゃー!!」と叫び声を上げた。

「吉田さん、スゴーい!またストライクッ!!ターキーだ!!」

美貴ちゃんとスマイリーはハイタッチをした。二人とも満面の笑みだ。良かった。

「よし、俺らも負けてられないぞ・・・!」

そう言って、谷本がボールを渾身の力で投げると、谷本もストライクをとり、この2チームは接戦を繰り広げた。

・・・・そう、僕と藍ちゃんのチームは取り残されたのだった。

元々、体育会系の部活をやっているスマイリーと谷本はボーリングが得意のようだった。

一方、僕はといえば、こういったゲームは苦手で、結局こうなるだろうなとは思ってはいたし、スマイリーチームを勝たせたいとゆう意思もあって低スコアでゲームは進んでいった。

しかし、谷本は空気を読めないヤツだ・・・・。

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「うわっ!!!また外した!・・・・・・ゴメン・・・藍ちゃん。」

「もう・・・またですか。」

笑いながら藍ちゃんは僕の肩をやさしく叩いた。

いやいや、藍ちゃんも可愛いもんだ。僕は何気に藍ちゃんに引き込まれていった感じがした。

結局、ボーリングは接戦の末、スマイリー・美貴ちゃんチームの勝利に終わった。

そして、僕と藍ちゃんは、カウンターに進み、財布を開けた。

「ゴメンね。オレ、こうゆうゲーム苦手でさ・・・。」

「んもう・・・。罰として今度、私にご飯奢ってくださいね。」

藍ちゃんは、皆から見えないようにカウンターの下で、携帯番号とメアドを書いた紙を僕の手に握らせて、微笑みながら言った。

「あ、う、うん・・・・。ゴ、ゴメンね、今度誘うよ・・・。」

僕はこんな風に携帯番号を教えてもらったことがなかったので、驚きと照れから、多少どもりながら答えてしまった。

「瑞樹さん、ずっと謝ってばっかり。」

藍ちゃんは僕の目をまっすぐ見つめながら微笑んだ。

「そうだね・・・・アハハ。」

僕は照れて、頭を掻きながらそう答えた。

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其之拾参

僕と和也は、図書室にたどり着き、席に腰掛けた。

そして、僕は合コンのあったその日のことを和也に話し始めた。

和也は興味津々でその話に耳を傾けた。

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「おお、ヤベッ!!遅刻だ・・・。」

僕は自転車のペダルを漕ぐ足をフル稼働させて、待ち合わせ場所の双葉駅前噴水を目指した。

携帯のメールには、スマイリーやら谷本の「まだか」という催促のメールが数件たまっていた。

「はあ、はあ・・・もう少しだ。ん?・・・・あれ?あのコはたしか隣のクラスの・・・・名前は知らないけど・・・・。」

僕は、駅に向かうそのコを見かけてすぐに隣のクラスの女子だと分かった。

たしか新入生の時、かわいいコがいるって噂で、僕らは数人で隣の棟にある、その教室まで見に行ったことがあったのだ。

しかし、たしかにルックスは可愛らしく見えたのだが、どこか人を拒むような雰囲気を持ってるような感じがした。

席に座っていたそのコはずっとうつむいたままで、どうやら同じクラスの女子からシカトされているようだった。

たしか、クラスメイトの誰かが、そのコと同じクラスの女子に情報を聞いた時に「あのコ、暗いからやめときなよ・・・」って言ってたのを思い出した。

いやいや、そんなことを思い出してる場合じゃないと、僕は全力で噴水を目指した。

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「おい!瑞樹!!遅せーよっ!」

谷本が怒鳴っている。

集合場所の双葉駅前噴水に着いたのは、約束の正午を過ぎて20分は経っていた。

「ゴメンゴメン、ちょい寝坊しちゃって・・・。」

「まあ、いいじゃん。コイツは、沢村瑞樹。んで、こっちは・・・。」

スマイリーだ。オトナなトコロを見せたい奴は寛大だ。スマイリー、ありがとう。

「北山美貴です。よろしくおねがいします。」スマイリー、お気に入りのミキちゃんだ。

「川上陽子です。よろしくおねがいします。すごい汗かいてますよ」ああ、あの時いっしょにいたコだな。今日はセルフレームのメガネをかけてて雰囲気がまた違った感じで、より可愛く見えた。

「あ、この二人に誘われてきました、上野藍です。よろしくおねがいします。」

このコは知らないが、なかなか可愛いじゃないか。目に力のある美少女だ。

だいたいこうゆうコンパでは一人くらいハズレが来てもおかしくないのだが・・・いや、なかなかこれは・・・・スマイリー、谷本ともに、浮き足だっているのは頷けた。

「あ、ども。沢村瑞樹です。遅れちゃって、ゴメンね。こちらこそよろしく。」

僕は照れながら、そして汗をハンカチで拭いながら挨拶した。

「んじゃ、まず、お腹も空いたし、とりあえずファミレスいかね?」

スマイリーが切り出した。

僕らは当然賛成し、まずは腹ごしらえすることに決めたのだった。

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2008年1月 7日 (月)

其之拾弐

麗華は、駅前にある楽器店「BLUE STEPS」の扉を開いた。

「てんちょー。こんばんわー!」

麗華が大きな声で挨拶すると、「BLUE STEPS」の店長、園田雄一は穏やかな声で言った。

「ああ、麗華ちゃん。こんばんわ。今日はどうしたの?」

園田は、メガネをかけ顎鬚を生やしたスラッとした体型で腰にはエプロンを巻いていた。

「ちょっとギター見てもらおうと思って。」

麗華はアコースティックギターのソフトケースのジッパーを開けた。

「うーん・・・ネックが反ってるだけだよ。まあ、このギターも長いもんね・・・ホントは新しいの買って欲しいけど・・・ハハハッ。」

園田は微笑みながら、トラスロッドを調整した。

「はい。じゃ、弾いてみて。」

「うん。」

ジャッ、ジャッ、ジャリーーーーーーーーーン♪

歯切れの良い和音が店内に響いた。

「お父さんの代から、もう何年くらいになるかな?」

「えーっと、私はまだ3年ほどだけど、20年以上は・・・。」

「麗華ちゃん、もう3年かー。この前通りかかったとき、聴いたけど凄いね。巧かったよ。」

麗華は、少し照れて頭に手をやりながら言った。

「いやー、まだまだですよ。でも、それなら声かけてくれたらよかったのに。」

「うん。でも、人多かったから・・・。」

「やっと、いつも来てくれるひとたちが、何人か出来たんです。」

「そう。それは、よかったね。ほんと、イイ声してたよ。」

「ありがとうございます。」

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麗華が店長、園田雄一に始めて会ったのは幼少の頃であった。

五歳の夏、両親に連れられて初めて「BLUE STEPS」を訪れた。

麗華の父は、アマチュアでバンドをやっていてフロントマンをしていた。

もちろんプロ志望であったが、それでメシは喰えず、結局サラリーマンをしながら、趣味で音楽活動をしていた。

その頃の「BLUE STEPS」は、店長を雄一の父、園田浩二がやっていた。

雄一は、といえば、そこで下積みとしてアルバイト店員をしていたのだった。

幼少の麗華に「こんにちわ。」と挨拶しても、麗華は父親の足に隠れるだけだったが、それが始めての出会いだった。

そして、麗華の父、藤崎涼は麗華が中学二年の時に、他界した。

藤崎涼は、自分の果たせなかった夢、「プロミュージシャンになること」を、一人娘の麗華に、たくしたかったようで、生前は、しばしば口に出していたそうだ。

ただ、麗華にそんな意思はなく、陸上部で汗を流す毎日だった。

しかし、高校入学の頃、たまたま涼のアコギを押入れから見つけ、その夢を思い出したらしい。

そして、「BLUE STEPS」に通い始めたのだった。

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其之拾壱

「あっ!麗華ちゃんっ!!」

大輔は、一人の少女を見つけて手を振った。

「あ。大輔さんと恵さん、こんばんわっ。今日もライブしてたの?お疲れ様です。」

少女は、少し低めの身長で、大きなアコースティックギターのソフトケースを背負っていたのもあって、かなり小さく見えた。

また、その小さな顔に、ちょっとキツめの大きな目が印象的で、かなり幼く見えた。

「今日は、ライブしてたの?」

恵は、麗華に話しかけた。

「ううん。これから、店長のトコ。ギター見てもらおうと思って・・・。」

麗華は、嬉々とした表情で答えた。

「そっかー。あまり遅くならないように気をつけてな。」

「うん。ありがとー。お二人もお疲れ様でした。」

一礼して、また駅の方へ足を向けた。

・・・・・・「あのコ、誰っすか??」

幸雄は、頬を赤らませ、恵に聞いた。

「さては、惚れたでしょ??あのコは、藤崎麗華ちゃん。ちょっと離れたところで、ストリートライブしてるわね。最近は、なかなかお客も増えたみたいよ。キレイな声してる。」

幸雄は図星だった。しかし、それを隠さないのが幸雄だ。

「ええ・・・すっげーかわいかったです・・・・。」

「そりゃ、惚れるわな。あんなかわいいコ、滅多にいないっしょ。アイドルでもおかしくないよね。」

大輔がそう答えると、恵は大輔の足を踏んだ。

「い、いてて・・・いやいや、オレはオマエだけだよ・・・。」

「冗談、冗談。麗華ちゃんは、わたしたちにとって、妹みたいなモノよ。」

恵は、顔をゆるめて幸雄に言った。

「すこし離れた岡井商店街でやってるから、また聴きにいってみたらいいよ。」

「はい。マジ、あのコの歌、聴いてみたいっす。」

幸雄は、二人に、礼を言い、帰路に着いた。

「ホンマ・・・あわただしいコやったわ・・・。」

二人は見合って笑い、腕を組んで駅の方へと足を進めた。

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