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2008年5月

2008年5月26日 (月)

其之参拾壱

日曜日になった。

藍ちゃんと約束していたので、僕は連絡をとり、

駅前で待ち合わせることにした。

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「こんにちわー。早いね」

「ああ、こんにちわ。さっき来たばっかだよ」

藍ちゃんは、とびっきりのおしゃれをしてきたのだろう。

駅前の噴水が陽に照らされ、その光の粒は

彼女の微笑をより綺麗に写した。

「さあ、どこに行きましょうか?」

藍ちゃんの小悪魔のような笑顔は、僕をいつも以上に

緊張させた。

「あ、うん・・・・えっと、パスタでも食べに行こうか」

とりあえず、女の子と御飯といったら、

パスタで大丈夫だろうと勝手に考えていた。

「え?いいね、いいね!じゃあ、どこにする?」

藍ちゃんは、はしゃいで僕の左腕に腕を組んできた。

これから、”好きな人がいるってこと”を

伝えなければならないのに、そんなことをされてしまい、

僕は心が揺らぎそうになった。

「藍ちゃん、いいトコ、知ってる?」

僕は聞いてみた。

「うーんと、ここからなら、”ジュリアンヌ”かな。

有名なんだよ。私も行ったことなかったから、

ちょうど行きたかったんだ」

「へー。じゃあ、そこに行こうか」

僕らは”ジュリアンヌ”に行って昼食をとることにした。

”ジュリアンヌ”は、若者向けな内装で、

おしゃれな雰囲気がした。

これなら、女の子受けいいだろうな、と僕は感心した。

店内はカップルであふれていた。

「スゴイねー。いっぱいだ」

日曜のお昼ということと、評判の店だということで、

行列が出来ていたので、僕らは一番最後尾に並んだ。

そして、二十分ほどして、空いた席に座ることが出来た。

「ああ、並び疲れたねー」

「うん。これは、期待できそうだ」

僕は、めんたいパスタ、

藍ちゃんは、イタリアンを注文した。

「わあ、おいしいね」

藍ちゃんは、一口、くちにすると、僕に言った。

「うん。うまいな。こりゃ、行列ができるのも、

うなずけるな」

「めんたいの方は、どんな感じ?

ちょっと貰っていいですか?」

「・・・・え?ああ、いいけど・・・・」

僕は藍ちゃんに、お皿を渡した。

「こっちも、おいしいですよ。食べてみてください」

そう言って、変わりにイタリアンのお皿を僕に

差し出した。

「・・・うん!こっちもイケる・・・・」

「ですよね。おいしいー!」

そして、僕らはあっとゆう間に、パスタを平らげた。

傍から見ると、僕らはカップルのように

みえたのではないだろうか。

少ししてから、僕は、ついに話を切り出した。

「・・・実はさ、オレ、好きな人がいるんだ・・・」

「え?・・・・・でも、あの時そんなこと

言ってなかったじゃないですか」

藍ちゃんは驚いて、僕に詰めかかってきた。

「あ、うん・・・」

僕は口ごもった。

たしかに、合コンの時には、麗華と知り合ってもなく、

藍ちゃんのことを好きになりかけていたのかもしれない。

あの時には、調子に乗って”恋人募集中”なんて

言ったかもしれない・・・・。

「・・・・・・・付き合ってるんですか?」

藍ちゃんが聞いてきた。

「・・・いや。・・・そうじゃないんだけど」

「私、瑞樹さんのことが好きです。あの時会って以来、

ずっと頭の中いっぱいになっちゃって・・・・

その人より私の方が絶対、絶対、瑞樹さんのことを

好きな自信があります!」

藍ちゃんは、涙目になって僕に訴えかけてきた。

「・・・・・ゴメン」

僕は小さく口を動かした。

「でも、まだ付き合ってないんですよね?

私、諦められないんです。

待ってます、待ってますから・・・・」

そう言って、藍ちゃんは、泣き出してしまった。

僕は罰が悪くなり、藍ちゃんを連れ、店を早々と出た。

すこし離れた場所に、ベンチがあったので、

そこに座り、藍ちゃんが泣き止むのを待った。

「・・・・・・・・待っててもらってもいいけど

・・・・それじゃ、悪いよ」

僕は、つい口走ってしまった・・・。

「ホントーですか?私、絶対、瑞樹さんが

好きになってくれるように努力します」

すこし、笑顔を取り戻したようだ。

しかし、女性の涙はやはり武器なのだなあ・・・。

僕は、せっかく決心して、今日、を挑んだのに、

揺らいでしまった・・・。

しばらくして、僕らは別れ、家に帰ることにした。

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「あ。和也。・・・・オレ。

今日、結局伝えたんだけど・・・・」

僕は、和也に電話した。

今日、藍ちゃんに好きな人がいると告げたこと、

そのあとの展開を話した。

「・・・・そうか・・・・。

まあ、彼女には悪いよな・・・・・。

でも、そこまで想ってくれてるなんて幸せだな。

それなら、瑞樹も早く藤崎に告白しなよ。

そうすれば、その後のこともハッキリとできるだろ?」

「・・・ああ。そうかもしんない・・・・」

僕は和也に言われて、麗華に告白する決心がついた。

それに、麗華のことを思うだけで、日に日に

胸が苦しくなってきていたんだ。

もう、ここが勝負どころかもしれない・・・・

僕は、麗華の携帯に電話をかけ、

来週の日曜、あの公園で会う約束をした。

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2008年5月25日 (日)

其之参拾

桐野幸雄は、あれ以来、練習を繰り返し、

ギターはそこそこの腕前になっていた。

そして、ひさびさに駅前でストリートライブを

おこなった。

「あ。大輔さん、恵さん、こんばんわ」

「お、君か。こんばんわ。久しぶりだねー」

向井大輔はあいかわらずの穏やかな口調で言った。

「こんばんわ。元気してた?」

鈴木恵は以前のことを思い出し、笑いをこらえながら、

挨拶した。

「元気ですよ。あれから、めっちゃ練習したんで、

多少、腕は上がってると思います」

「うん。さっき、横で聞いてたけど、上達してるねー」

「ありがとうございます。

あれから、あまりにキーの高い曲は止めてます。

忠告どおりに。

手ごたえもなかなかありました」

「よかったじゃん。そういえば、今日は商店街の方で

麗華ちゃんがライブやってるみたいなんで、

今から行くんだけど。君も行くかい?」

「ああ。あの可愛かったコですね。

行きます、行きます。是非!!」

「あはは・・・あいかわらず勢いあるね。

若いっていいな」

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岡井商店街に入ると、アルペジオにのせた

美しい歌声が、アーケードをかすかに震わせていた。

そして、風が”ことのは”を運び、人々のこころの

琴線を奏でた。

「すげー・・・・。なんか・・・・涙が出てきた。

こんなの初めてだ・・・・」

幸雄は目に涙を潤ませ、鼻水をすすった。

「すごいな。

彼女、ここまでうまくなってたんだな・・・」

「うん・・・。せつない詞が心に響く・・・・」

麗華をとりまく観衆の数は、

大輔と恵のデュオ”FINE LINE”を上まわっていた。

「駅前じゃなく、商店街でここまで集められたら、

もう私たちより彼女のほうが上ね・・・」

恵は感心して言った。

「・・・ああ。ただ、ただ・・・すごいな」

パチパチパチパチ・・・・・・

ライブを終えると無数の拍手と歓声が彼女を包んだ。

そして、人波が静まってから、三人は麗華に近づいた。

「こんばんわー。すごかったねー」

「あ。大輔さん、恵さん、こんばんわ。

観てたんですか?・・・・ちょっと恥ずかしいな」

麗華は照れながら言った。

「うん。途中からだけど。すごかったね・・・・

ここまで、うまくなってるとは思わなかったよ」

「え。そうですか?大輔さんたちに言われたら

すごい嬉しいです」

「こんばんわ!オレ、桐野幸雄です。

前、会ったよね?

すっげー感動した・・・・」

幸雄は急に話しに顔を突っ込んだ。

「・・・あ、ああ、あの時の・・・どうもありがと」

麗華は、幸雄があまりにも勢いよく近づいてきたので、

すこし体を避けつつ、お礼を言った。

「・・・・・・・・惚れました。好きです!!」

「はああ!!!???」

幸雄が唐突に告白したものだから、

三人はあっけにとられた・・・・。

「ははは・・・あまりにも急すぎるな」

大輔は呆れた顔をした。

「そりゃ、このコ、かわいいし、イイコだから

分かるけど。まだ二回しか会ってないじゃん」

「いや。オレには分かるんです。

これが運命ってヤツです。

オレ、こんな気持ちになったのは初めてなんですよ。

伝えられずにいられなかったんです」

「ううむ・・・・」

大輔は顎ヒゲに手をやり、マユをゆがめた。

麗華は、びっくりしていたが、すぐに真面目な顔をして、

真摯に答えた。

「ゴメン・・・私、全然あなたのこと知らないし・・・

それに好きな人がいるんだ」

「え?麗華ちゃん、好きな人いたんだ?初耳ー!」

恵は女の子らしく、恋バナには興味津々だった。

「・・・あ、うん・・・・」

「でも、たしか・・・

付き合ってる人はいなかったよね?」

大輔が思い出したように言った。

「うん・・・・そうなんだけど・・・」

「うんじゃ、うんじゃあ・・・・

オレにもまだチャンスはあるってことだよね。

今はムリでも、絶対、振り向かせて見せる。覚悟しなよ」

幸雄は目を輝かせ、気合の入った笑顔を見せた。

「まあ、麗華ちゃん、

幸雄くんもそんな悪い人じゃないし、

ともだちとして長い目でみてやってよ」

大輔がフォローした。

「・・・ええ。ともだちなら・・・・」

麗華は不本意ながらも、大輔に言われたことにより、

了解した。

「あはははは。

あいかわらず、幸雄くんは笑わせてくれるね・・・・」

恵はもうこらえきれずに、大きな声をあげて笑い出した。

麗華は困惑した顔を隠し切れずにいた。

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其之弐拾九

僕はその日以来、学校から帰宅するとすぐに

ギターの練習を始めた。

そのハマりようは、真夜中でもアコギをつま弾いていて、

母に怒鳴られてしまうこともしばしばだった、ぐらいだ。

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「なんだよー、アイツ。

沢村くんと話しなんかしちゃって・・・」

「ホント、マジむかつくー」

「どうする?」

「そりゃ、こうゆう時は、こうでしょ」

「ハハハ・・・・マジ!?」

ビリビリビリ・・・・・

五人ほどの女子が机の中の教科書を破ったり、

落書きをしたりした・・・。

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「あのー・・・、沢村さん、いますかー?」

「ああ、藤崎の友達ね。ちょっと待って。瑞樹ー!」

麗華の友人という佐々木佑香が僕を訪ねて隣の

僕のクラスへ来た。

和也が佑香を見つけ、僕を呼んでくれた。

「あ。こんちわ。何?」

僕は少し落ち込んだ表情をした佑香を見て、

何かがあったことに気付いた。

「実は・・・最近、麗華に対するイジメが

ヒドくなってるんです。

それが、沢村さんと親しげにしてるっていうのが

理由みたいで・・・。

もう、麗華と話しかけないで欲しいんです・・・」

僕は頭をガツンとハンマーで横から殴られたかのような

衝撃を受けた。

「マジで?・・・でもなんでオレなの・・・?」

「知らないんですか?

最近、沢村さん、私のクラスの女子の間で人気が

あるんですって」

「はぁ?」

そういえば、麗華と最初に話した時、そんなことを言っていた。

冗談だと思っていたが・・・。

「・・・でも、なんで彼女は今まで

イジメられてきたんだ?」

「・・・それは・・・

一年生の頃、学級委員で、

人気のあった人がいたんです。

その人が、麗華を好きになって、告白したらしいんです。

麗華、断ったんですけど、それがタイミング悪くって

おしゃべりな女子がちょうど聞いちゃって、

それで、あっという間に広まって。

その人、人気あったし・・・

あと噂では、その人がいじめをけしかけたっていうのも

聞いたことあります。

・・・で、そんな理由なんかもう関係なくて、

今でも続いてるみたいで・・・・」

「・・・・・・・・・・・・そっか

・・・・・・・・・でも・・・・」

「ともかく、お願いしますね」

そう言って佑香は足早に隣のクラスへと消えて行った。

麗華に対するイジメが現実としてあったということ、

それに僕のことで、それがヒドくなっているということを

聞かされて、僕は愕然とした・・・。

こういう時、僕はどうすればいいのだろうか・・・・。

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2008年5月24日 (土)

其之弐拾八

「よぉ、瑞樹。来てくれたんだ。ありがとーな

・・・・えーっと、あれ?このコは・・・・たしか

同じ学年だっとよね・・・えーっと・・・」

俊介は、通してくれた楽屋で、僕らを見るなり言った。

「あ。藤崎麗華です。こんばんわ。

三村さんは知ってますよ。だって有名人だもん」

俊介は校内で名が知れている。

麗華が知っているのは当然だろう。

「今日は楽しんでってね。オレらは対バンの中で

トリだから、あと一時間ほど後だけどね」

「ああ。ガンバれよ。ただ、ハードロック系は

実は苦手なんだけどな」

僕は俊介とにぎりこぶし同士を合わせた。

「はは。まあ、そう言わずに観てってよ」

「ああ。それじゃあな」

僕と麗華は楽屋を後にした。

ライブハウス”クラッシュド・ペッパー”は

県内では有名なライブハウスでプロの出演も多い。

たまにこういったアマチュアバンドが

対バンをして出演する。

今回、俊介のいる”マリオンズ・アーク”以外にも、

ジャンルはさまざまに、

ロカビリー、メロコア、UKロック風の

アマチュアバンドが四組、出演の予定だ。

ライブハウス内は円卓が何台か置いてあったり、

バー風のカウンターがあったりで、

ドリンクをとりながら鑑賞できるようになっている。

僕らはソフトドリンクを飲みながら、他バンドの演奏を

観ていた。

対バンのなかでも、僕はロカビリーの

”ピンク・スクリュードライバー”が気に入った。

それは、ボーカルの真鍋正二にみずから、

握手を求めにいったほどだ。

「沢村くん、ロカビリーとかも好きなんだね。意外ー」

「うん。オレも今日気付いた。

リズムが肌に合うとゆうか・・・ああ、あと

ああいうウッドベースの音も好きかもしんないな」

「ふーん。

・・・・・・あ、”マリオンズ・アーク”の出番だよ」

大歓声と拍手の中、俊介たちが舞台袖から出てきた。

すごい熱気だ。

”マリオンズ・アーク”目当てで来た観客がステージ前へ

ドッと押し寄せた。

僕は、”マリオンズ・アーク”の人気を初めて知った。

「へー。人気あるんだなー・・・

あら?なんか同じ学校の人間も結構来てんだ」

そういえば、見渡せば見たことのある人間がところどころ

見られた。全員、女の子だったが・・・。

やはり、俊介人気なのだろうか。

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演奏はハードロックながらの激しいステージ。

渦巻く観客の波とバンドの一体感。

僕らは意識せずとも演奏に引き込まれた。

ライブが終わると、みんな激しい運動をしたかのように

一汗かいていた・・・。

「すごかったね・・・・。カッコよかった」

「ああ。オレなんかまだ耳がキンキンしてるよ」

「ははは。ハードロックも悪くないね」

「うん。そうだな」

本当は、麗華と一緒にこの空間を味わえたことに

僕は笑みをこぼさずにいられなかった。

「・・・瑞樹、どうだった?」

俊介がタオルを首に巻き、まだ肩で息をしながら

出てきた。

「ああ。よかった。カッコよかったよ」

「そうか。よかった。藤崎さんも楽しんでくれた?」

「うん。カッコよかったよ。

私も路上でアコースティックライブやってるんだけど、

こうゆうバンド形式のライブも楽しそうでいいよね」

「へー。ストリートやってんだ?

また今度聴きに行くよ。あ、もちろん瑞樹と一緒にね」

「うん。今日、沢村くんもアコギ始めたんだよ」

「ほぇ?そうなの?

・・・瑞樹もようやく見つけたんだな。ガンバレよ!」

「ああ。サンキュな」

その後、帰ろうとしていた俊介のまわりには、

観客で来ていた女の子たちが取り巻いていた。

「・・・・・・沢村くん。うらやましいんでしょ?」

「・・・・・・うん。ちょっと

・・・・いやいや・・・・」

冗談を言い合いながら、気が付くと、

時計はもう晩の9時を回っていた。

”この時間が永遠に続けばいいのになあ・・・・・”

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其之弐拾七

「店長、こんにちわー!」

「お、麗華ちゃん、こんにちわー。

あれ?・・・そこの彼は・・・?」

「お客さん連れてきてあげたんだよ。

こちら、沢村瑞樹くん。ギターを始めたいの。

どれが、おすすめかなぁ?」

「おお、そうか、そうか。麗華ちゃん、ありがとーね。

えーっと、こんにちわ、いらっしゃい。僕はここの

店長をしてる園田っていいます。よろしく」

「沢村瑞樹です。こんにちわ」

「えーっと、予算はだいたい・・・?」

「一応、五万ほどは持ってきてるんですが・・・・」

「そうか、じゃあ大体このあたりのだね。

これなんかどうかな?」

園田は一本のギターを持ってきて僕に渡した。

「ヤマハのなんだけど、個体差がそんなにないと思うし

音も安定してると思うよ。それか、こっちのタカミネとか

ヤイリとかさ・・・」

園田はいろいろ薦めてきたが、初心者の僕にはあまり

よく分からなかった。

「えーっと・・・。このギターなんか大きくてカッコイイ

かもしれないですね」

僕は今まで見せてもらったギターより

ひとまわり大きいギターを指差した。

「ああ。エピフォンのEJ-200だね。

ギブソンのJ-200の廉価版と思ったほうがいいよ。

音はあまり良くないと思うなあ・・・・」

「そっかー・・・」

「私がちょっと弾いてみようか?」

麗華はEJ-200を抱えて弦をつま弾いた。

ブルースの常套のようなアドリブ風フレーズが軽快に

店内を鳴った。

「私にはちょっと大きすぎて弾きにくいけど、

そんなに悪くないと思うけどなあ・・・・」

麗華は、他に薦めてきたギターも試奏してくれた。

「・・・うん。やっぱ、見た目が気に入ったんで、

コレ貰います」

僕はEJ-200を手にして園田店長に言った。

「コレでいいかい?ありがとうね。んじゃ、梱包するよ。

そうだ。・・・・ってことは

麗華ちゃんが瑞樹くんの先生になるわけだ?」

「ええ。オレまったくの初心者なんでお願いしたんです」

「ほう。麗華ちゃんもとうとうそんなレベルまでに・・・」

園田は顎ヒゲを指でいじりながら、

麗華を冷やかすように言った。

「もう・・・・。

私だってまだまだ初心者レベルですよー」

「いやいや・・・・かなり練習してると思うよ。

今のアドリブだって初心者じゃ、なかなか・・・・。

実はね、僕も若い頃よく駅前で弾き語りしてたんだよね」

園田は、昔を懐かしむように遠い目をした。

「まあ・・・もう落ち着いてるけどね・・・はは・・・

じゃあ、なにか分からないことがあったら

僕も力になるよ。ガンバってね!」

「はい。ありがとうございます」

僕はハードケースに入ったEJ-200を手に持ち、

麗華と店を出た。

「ね。いい人だったでしょ?」

「ああ。なんか優しそうな人だった」

「もう何年くらいかなあ・・・店長に会って・・・

あっ。・・・でね、これ、昔、ギターを始めた頃に

使ってた教則本とコードブック。

まず、好きな曲でカンタンな曲を一曲

マスターすることだね」

そう言って、麗華はもう一冊、ぶ厚い本を

カバンから出した。

チェスターフィールドの全曲歌詞集だった。

「前、チェスターフィールドが好きって言ってたよね?

チェスフィーなら”Loving you”なんかが、キーもCで、

でてくるコードも5、6個だし、

最初には、いいんじゃないかなーと思うんだ」

「へー。いろいろありがとう」

「ううん。これからどうしようか?また公園に戻って

少し練習でもしてみる?」

「うん、そうだね・・・・

あ、でもちょっとお腹も空いてきたな」

「あは。そうだね。お昼、まだだった」

僕らはファミレスで昼食をとることにした。

そこで、麗華はBLUE STEPSのこと、親父さんのこと、

プロになる夢など、いろんなことを話してくれた。

僕は、ひとつ、またひとつと、麗華のことを

知ることができた。

昼食をすませ、ファミレスを後にし、僕らは待ち合わせた

公園に戻った。

そして、僕は、麗華の熱烈指導を受けた。

その甲斐あってか、なんとか

”Loving you”をダウンストロークのみで弾ける

ところまでになった。

初心者がつまずくという”Fコード”をなんなくマスター

できたのは、麗華にとっては驚きだったみたいだ。

「まだまだうまくいかないけど・・・・うん、楽しいね」

僕は時間を忘れるほど夢中になった。

それはきっと、ギターにハマったということだけでなく、

麗華といっしょにいられたことによるものだ・・・。

なぜ、楽しい時間というものは、

過ぎ行くのを早く感じるのだろうか。

「あ、もうこんな時間だね・・・・」

麗華は時計を見ながら言った。

「・・・・・・・・・・・・・・・そうだ。

オレのツレで三村ってのがいるんだけど、

今日ライブハウスでライブやるんだ。

いっしょに行かない?」

そう言って、僕はチケットを麗華に見せた。

「三村くんって、あの三村くん?

へー、バンドやってたんだ・・・・。

うん。観てみたい、観てみたい。

でも、いいの・・・?」

「ああ、じゃあ行こうよ」

僕は心の中で小さくガッツポーズをしたんだ。

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2008年5月20日 (火)

其之弐拾六

「いってきまーーーーす」

僕は急いで自転車にまたがり、家を出た。

外は快晴。

待ちわびていた日曜日がようやく僕の目の前に

訪れた。

[彼女の待つあの公園へ・・・・・]

ペダルを踏む足はまるで空回りをしているかのようで、

なかなか先に進めない気がした。

そして、高鳴る鼓動は僕を急かした。

[早く麗華に会いたい・・・・・]

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ようやく公園に到着すると、ベンチに腰掛けている

彼女を見つけた。

髪をアップにし、ナチュラルメイクできめた彼女は、

学校の時とは違って華やかで、すれ違う誰もが思わず

振り返ってしまうであろうほどに綺麗だった。

僕の胸の音が早足に刻まれていく。

「お待たせー」

僕は彼女へと歩をすすめた。

「こんにちわー。・・・・って、沢村くんって

もしかして遅刻魔?・・・・」

麗華は笑顔を見せながら言った。

時計はたしかに12時を30分ほど回っていた。

「ゴメン、ゴメン・・・・。

おめかし、してて遅れちゃった・・・・・なんて」

冗談のように言ったが、それは決して冗談でも

なかったのは秘密だ。

「じゃあ、いこうかー」

僕らは駅前へと自転車に乗って並走した。

「あ、ここでよく路上ライブやってるの。

そう。そこの薬局の前」

麗華はちょうど岡井商店街の由良薬局の前を

通りかかったときに指差して言った。

「へー。オレも今度観にくるね」

「うん。でもなんか、知ってる人に見られるのも

恥ずかしいね」

「はは」

「岡井商店街って、お店閉まるの結構早いでしょ。

だからちょうどいいんだよね。

でも、高校生ってことは内緒にしとかないといけない

時間帯なんだ・・・」

「大丈夫なの?普通に、高校生って

バレそうだけど・・・」

「今のとこは大丈夫だけど。まあ、時期に

ヤバいかもね・・・・」

「ウチの高校、厳しいから問題起こしたら

まずいよな・・・」

「うん・・・・・。だから、今度から商店街が休みの

水曜の夕方頃にしようかなって・・・。

学校が終わってからね」

「そっかー。オレも早く路上で出来るように

目指してガンバろ!」

「うん!ガンバって!!応援するよ」

麗華の励ましに、僕は俄然やる気が沸いてきた。

自転車を漕ぐ足も軽やかだ。

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其之弐拾伍

「おぉ、瑞樹!」

僕は俊介に久々に会ったような気がした。

「あ、俊介、なんかひさしぶり・・・」

「ああ、ちょっといろいろあってな・・・

そうだ。これを渡そうと思って」

俊介は僕に、なにやら紙キレを差し出してきた。

「今度の日曜、ライブやるんだ。二枚やるから

だれか誘って来いよ。谷本に聞いたけど、

誘う相手いるんだろ?」

谷本か・・・いらないことを言いやがったな・・・。

谷本は藍ちゃんのことを言っていたのだろう。

「あ・・・・その日はちょっと・・・・・。

あ、でも時間があったら行くよ」

僕は急に麗華を誘ってみようかと思った。

「あぁ、今回はかなり練習したから、カッコイイライブに

なると思うよ。ぜひ観に来てくれ」

「うん・・・・。けど、最近、剣道のほうは

どうしてんだ?大会、来月らしいじゃん?」

「ん。ああ、全然やってねーーーー・・・・って

言うと思った?

実はオレもいろいろやってんのよ。

みんなには言ってないけどね」

俊介は白い歯を見せて笑った。

つまり、こういうことらしい。

付き合ってる彼女の家が剣道の道場をやってるらしく、

そこで、大学生の有段者の人たちに稽古を

つけてもらっている。

そして朝は、毎日かかさず走っていて、体力づくりの

面でも万端らしい。

そこまで忙しい身で、バンドにも打ち込んでいる

なんて・・・僕は俊介を尊敬のまなざしで見ていた。

他人からの期待を一身に背負いながらも、

己を磨いていく強さ。

やはり、コイツは違う。

このことは、他の誰にも明かしていないらしい。

僕も人に言わないようにと念を押された。

そこでの稽古は凄まじいらしく、

人に見せたくないらしい。

それに加えて、敵をあざむくには、まずは味方から

ということなのだろうか。

僕は、「なるほど、そういうことだったのか」と、

ひとまず安心した。

そして、しばらく俊介と話し込んだ。

いつも通り、他愛もない話しばっかりだったが、

僕は俊介が何も変わっていなかったことにも

安心したんだ。

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2008年5月19日 (月)

其之弐拾四

「お前、今付き合ってるオンナ、いないんだよな?」

スマイリーは、しきりに肩を震わせている。

その瞳には何か溜め込んだものが見えた。

「ああ。いないけど・・・。どうしたんだよ、お前」

「だったら、美貴ちゃんと付き合ってやって

くれないか?」

「は?美貴ちゃんって・・・お前の好きなコだろ?」

「・・・いいだろ!美貴ちゃんはお前のことが

好きなんだよッ!」

少し遠目から、のぞいていた僕らにも、その声は届いた。

どうやら、あの後、スマイリーは

電話のやりとりかメールで、

美貴ちゃん本人から告げられたのだろう・・・。

「イヤだ」

和也が断るとスマイリーは和也の襟元を掴んで、

ついには涙を溢れさせて言った。

「た、たのむよ・・・。おねがいだ・・・・。

あのコに悲しい思いをさせたくねーんだ」

何度も何度も、スマイリーは和也に頼み込んだ。

しかし、和也は首を縦には振らなかった。

「イヤだ、って言ってんだろ。お前が好きになった

オンナだろーが!

そこまで、そのコのことを思ってんのなら、

その気持ちをありのまま、そのコにぶつけてみろよ!

オレだって、

お前に言われてオンナと付き合いたかないよ」

「うぐっ・・・」

「どうせ言ってねーんだろ?ちゃんと好きだって

言ってみろよ。

玉砕したら玉砕したでいいじゃねーか・・・」

「う、うあああああああああああ・・・・」

スマイリーは泣き、わめき始めた。

僕らはただその光景をみつめるしかなかった。

「ガンバレって。オレら、みんな応援してるからさ」

泣き崩れてしまったスマイリーの肩に手をやり、

和也は優しい声で言った。

和也はオトナだ。

僕はスマイリーに何も言えず、

ただ、その事をひた隠しにしたままだった・・・。

僕は自己嫌悪した・・・。

そして、後日、スマイリーは美貴ちゃんに告白した。

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「よお!」

スマイリーは、僕らが汗を流しながら遊んでいた、

昼休みの体育館にやってきた。

「やっぱ、ダメだったわ・・・・・ははは」

スマイリーは目に涙を浮かべながらも

どこか清々しい表情をしていた。

「そっかー。仕方ねーって。お前みたいなイイ奴

振るなんて、そのコも分かってねーなー。

しょうがねー。今度、知り合いのコでも紹介するよ」

和也はバスケットボールをスマイリーに向けて投げた。

スマイリーはそれをキャッチして言った。

「マジで!?うぉぉぉー。ヤッター!!」

立ち直りが早いところも

スマイリーのイイところのひとつだ。

僕らはスマイリーのイイところをたくさん知っている。

それが調子のいいところばかりだと言えば、

そうかもしれないけど、

僕らは、その愛嬌のあるキャラクターに癒されている。

長く付き合えば、付き合うほどに、

人は人に人の醜いところをみせつけてしまう。

それでも、それを上回るほどの魅力を誰もが持っている。

僕がここにいる理由は、きっとそうゆうことなんだろう。

「ああ。オレも頼みますよー。カズさまー」

谷本だ。

相変わらずの調子の良さに僕らは笑った。

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2008年5月18日 (日)

其之弐拾参

しばらく、自転車を押し、三人で喋りながら帰った。

僕は正直あまり話していなかったと思う。

もともと口下手な印象の強い僕だから、

あまり悟られなかったと思うんだが・・・。

藍ちゃんとは家に近い場所で別れ、

その後しばらく、僕は和也二人で自転車を押した。

「藍ちゃん、可愛いじゃん・・・・。

勿体無いな・・・・」

「あ。うん。それは分かってる・・・・」

「あれは確実にオマエに気があるな」

「そうなのかなぁ・・・。

嬉しいのは嬉しいんだけど・・・」

「ああ。藤崎のことだよな。まあ、仕方ないか・・・。

でも、いつまでもズルズル引っ張るのは彼女に悪いし、

気がないなら、早めに言ってやれよ。

彼女、いいコだったしな・・・・」

「うん。分かってる。

今度会ったら話そうと思ってる・・・」

「そっか・・・・」

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昼休みの合図で全校生徒は昼食をとり始めた。

ある者は弁当を持参し、ある者は学食へと足を早める。

僕は、弁当を持って体育館へと急いだ。

体育館は昼休みには毎日、僕らの溜まり場と化している。

僕が教室を出ようとしたところ、

隣のクラスから、麗華の姿を見かけた。

「あ。藤崎さん」

僕は麗華を呼び止めた。

学校での麗華は、髪を下ろし、ほぼスッピンの状態で

黒ブチのメガネをかけ地味目な印象だった。

だけれども、メガネではその美貌を隠し切れず、

少なくとも僕にとっては魅力的だった。

「あ。お弁当?

私もこれからお弁当食べようと思ってるんだ」

麗華の隣にはもっと地味目な

お世辞にも綺麗とはいえないが優しそうなコがいた。

「こんにちは。佐々木佑香って言います。

このコ、いいコなんで、

これからもよろしくお願いしますね」

「いやいや、オレのほうこそ、

よろしくおねがいします、だよ」

よかった。

噂では、クラスでハブられていると聞いていた。

そんなことないじゃないか。

こんな優しそうな友達もいるんだし。

僕は胸を撫で下ろした。

そして、そこでしばらく話しをし、それから

僕は彼女たちと別れ、体育館へと急いだ。

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「瑞樹、まだメシ喰ってねーの?」

谷本は、和也とバスケットボールで遊んでいた。

「ああ。ちょっといろいろあってな・・・」

僕は体育館においてある平均台の上に弁当を広げ、

食べ始めた。

ガラガラガラ・・・・・・・・・・・・・

「カズー・・・」

スマイリーだ。いつも笑顔の男だが、

僕は初めて見た気がした。

少し落胆したような、怒りに肩を震わせているような、

そんな表情を。

スマイリーは体育館のスライド式ドアを開け、

和也の前へと足をすすめた。

「ん?・・・どうしたんだよ?

オマエらしくない顔してんぞ」

「ちょっと話しがあるんだ。ちょっと来てくれないか」

「ああ、いいけど・・・・」

スマイリーと和也は体育館の外へ出た。

そして、僕らも後を追った。

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2008年5月17日 (土)

其之弐拾弐

「ところで、日本史の勉強すすんでるか?」

和也が聞いた。

「ああ。一応、毎日やってるんだけど・・・」

「これ、使ってみたら?

オレが書いた年表なんだけど、

日本のこの時代に、

世界では何があったのか分かりやすい。

これを繰り返し何度も書き写すだけでも全然違うと思う」

和也は、丁寧に書き込まれた手製の歴史年表を

僕に手渡してくれた。

「サンキュ。やってみるよ」

僕は図書室が閉まるまで和也と勉強を続けた。

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「もう、こんな時間だな。そろそろ帰るか」

空は茜色。

夕暮れが僕らを照らし出し、校舎の壁に影を伸ばした。

「あ。ちょっと教室寄っていい?忘れ物してたんだ」

僕は、俊介に借りていたCDを教室の机の中に

忘れていた。

俊介はハードロック系の音楽が好きらしく、

僕にも薦めてきた。

僕はジャンル的に苦手だったが、

聴いてみるとそんなに悪くもなかった。

どうやら、俊介は最近、

エレキギターをやっているらしく、

先輩のバンドに入れてもらっているようだ。

ライブハウスデビューもしたみたいで、

僕は、今度観に来いよ、と

俊介に誘われていたんだ。

教室に入って、机の中に手を入れると、

そのCDがあった。

僕はすばやく手にとり、教室を後にしようとした。

「瑞樹さん」

「え?」

そこには、あの藍ちゃんがテニスラケットを持って

立っていた。

「これから帰るんですか?私もさっき部活が終わったんで

一緒に帰ってくれませんか?」

彼女は少し照れくさそうに僕にニッコリと微笑んだ。

「あれ?このコ誰?」

和也は少し驚いて聞いた。

「あ。一年の上野藍です。こんにちわ、はじめまして。

沢井さんですよね?たしかにカッコいいですね。

美貴ちゃんが好・・・」

「あ、そういえば藍ちゃんもココの一年だったもんね」

僕は慌てて藍ちゃんの言葉を遮るように口を挟んだ。

「ああ。あの藍ちゃんね。こんにちわ。

可愛いコじゃん、瑞樹」

和也は僕の頭を軽く小突きながら言った。

「え?」

藍ちゃんは頬を赤らめた。

「テニス部なんだ?

オレ、部長の相川って

二年の時、同じクラスだったんだ。

どう?厳しくない?」

「ええ、優しいですよ。後輩思いのイイ先輩です」

「へえーーー・・・」

和也は何やら藍ちゃんと意気投合して、

しばらく話し込んだ。

「瑞樹さん、ヒドいんですよ。

あれから待ってるのに、全然連絡くれないんです」

藍ちゃんはスネたようで、

だけれども、冗談を言っているかのような

小悪魔な表情をした。

「あぁ。ゴメン。電話しようとは

思ってたんだけど・・・」

藍ちゃんは魅力的な女の子だ。

きっと今までの僕であったり、

他のどんなオトコでも、こんなちょっとした

待ち伏せをされたらどんなに嬉しいことだろう。

だけど、麗華に心を奪われてしまった今、

思わせぶりな態度を見せるのは彼女に対しても失礼だ。

だから、会って話をしようとは思っていたんだ。

「約束おぼえてます?」

「ああ、ボーリングの時の・・・」

「アレ、今週の日曜日にお願いしていいですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」

僕は麗華と約束をしていたのを思い出した。

「ゴメン・・・・・・・。

その日はちょっと・・・・・・」

「ええーーーー。何か用事でもあるんですか?

・・・・・じゃあ、来週でいいですぅ」

藍ちゃんは残念そうに言った。

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