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2008年5月25日 (日)

其之参拾

桐野幸雄は、あれ以来、練習を繰り返し、

ギターはそこそこの腕前になっていた。

そして、ひさびさに駅前でストリートライブを

おこなった。

「あ。大輔さん、恵さん、こんばんわ」

「お、君か。こんばんわ。久しぶりだねー」

向井大輔はあいかわらずの穏やかな口調で言った。

「こんばんわ。元気してた?」

鈴木恵は以前のことを思い出し、笑いをこらえながら、

挨拶した。

「元気ですよ。あれから、めっちゃ練習したんで、

多少、腕は上がってると思います」

「うん。さっき、横で聞いてたけど、上達してるねー」

「ありがとうございます。

あれから、あまりにキーの高い曲は止めてます。

忠告どおりに。

手ごたえもなかなかありました」

「よかったじゃん。そういえば、今日は商店街の方で

麗華ちゃんがライブやってるみたいなんで、

今から行くんだけど。君も行くかい?」

「ああ。あの可愛かったコですね。

行きます、行きます。是非!!」

「あはは・・・あいかわらず勢いあるね。

若いっていいな」

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岡井商店街に入ると、アルペジオにのせた

美しい歌声が、アーケードをかすかに震わせていた。

そして、風が”ことのは”を運び、人々のこころの

琴線を奏でた。

「すげー・・・・。なんか・・・・涙が出てきた。

こんなの初めてだ・・・・」

幸雄は目に涙を潤ませ、鼻水をすすった。

「すごいな。

彼女、ここまでうまくなってたんだな・・・」

「うん・・・。せつない詞が心に響く・・・・」

麗華をとりまく観衆の数は、

大輔と恵のデュオ”FINE LINE”を上まわっていた。

「駅前じゃなく、商店街でここまで集められたら、

もう私たちより彼女のほうが上ね・・・」

恵は感心して言った。

「・・・ああ。ただ、ただ・・・すごいな」

パチパチパチパチ・・・・・・

ライブを終えると無数の拍手と歓声が彼女を包んだ。

そして、人波が静まってから、三人は麗華に近づいた。

「こんばんわー。すごかったねー」

「あ。大輔さん、恵さん、こんばんわ。

観てたんですか?・・・・ちょっと恥ずかしいな」

麗華は照れながら言った。

「うん。途中からだけど。すごかったね・・・・

ここまで、うまくなってるとは思わなかったよ」

「え。そうですか?大輔さんたちに言われたら

すごい嬉しいです」

「こんばんわ!オレ、桐野幸雄です。

前、会ったよね?

すっげー感動した・・・・」

幸雄は急に話しに顔を突っ込んだ。

「・・・あ、ああ、あの時の・・・どうもありがと」

麗華は、幸雄があまりにも勢いよく近づいてきたので、

すこし体を避けつつ、お礼を言った。

「・・・・・・・・惚れました。好きです!!」

「はああ!!!???」

幸雄が唐突に告白したものだから、

三人はあっけにとられた・・・・。

「ははは・・・あまりにも急すぎるな」

大輔は呆れた顔をした。

「そりゃ、このコ、かわいいし、イイコだから

分かるけど。まだ二回しか会ってないじゃん」

「いや。オレには分かるんです。

これが運命ってヤツです。

オレ、こんな気持ちになったのは初めてなんですよ。

伝えられずにいられなかったんです」

「ううむ・・・・」

大輔は顎ヒゲに手をやり、マユをゆがめた。

麗華は、びっくりしていたが、すぐに真面目な顔をして、

真摯に答えた。

「ゴメン・・・私、全然あなたのこと知らないし・・・

それに好きな人がいるんだ」

「え?麗華ちゃん、好きな人いたんだ?初耳ー!」

恵は女の子らしく、恋バナには興味津々だった。

「・・・あ、うん・・・・」

「でも、たしか・・・

付き合ってる人はいなかったよね?」

大輔が思い出したように言った。

「うん・・・・そうなんだけど・・・」

「うんじゃ、うんじゃあ・・・・

オレにもまだチャンスはあるってことだよね。

今はムリでも、絶対、振り向かせて見せる。覚悟しなよ」

幸雄は目を輝かせ、気合の入った笑顔を見せた。

「まあ、麗華ちゃん、

幸雄くんもそんな悪い人じゃないし、

ともだちとして長い目でみてやってよ」

大輔がフォローした。

「・・・ええ。ともだちなら・・・・」

麗華は不本意ながらも、大輔に言われたことにより、

了解した。

「あはははは。

あいかわらず、幸雄くんは笑わせてくれるね・・・・」

恵はもうこらえきれずに、大きな声をあげて笑い出した。

麗華は困惑した顔を隠し切れずにいた。

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コメント

久しぶりに来たら、
随分と進行しているのに、ビックリです。
一気に拝見しました、読みやすかったです。

これで、登場人物とそれぞれの相関関係が
出揃ったのでしょうか?

今後も期待しています。等とプレッシャーをかけつつ
では、また~

投稿: とくちゃん | 2008年5月25日 (日) 16時13分

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