« 2008年5月 | トップページ | 2008年8月 »

2008年6月

2008年6月24日 (火)

其之参拾六

「そうか・・・・・」

俊介は電話越しに僕に言った。

「オレも、オマエら、お似合いだと思っていたんだ

けどなあ・・・。

まあ、仕方ない・・・。

でも、その藍ちゃんってコ、大切にしてやりなよ。

すげーいいコじゃん」

「ああ、わかってる・・・」

「そうかー。瑞樹にもとうとう彼女が出来たか。

相手は違っても、喜ぶべきことじゃん。

二人で楽しい思い出を増やしていけば、

あのコのことだって、すぐに忘れられるさ」

「・・・ああ。ありがとうな」

「なら、今度ダブルデートでもするか?

オレも、瑞樹の彼女ってコに会ってみたいしさ。

オレの彼女も紹介したいし・・・」

「・・・ああ、また今度・・・」

「なんだよ!まだ引きずってるのか?・・・

あ、そうだ。今度の日曜、剣道の県大会があるんだ。

オレが優勝した姿を見せてやるよ。

絶対、来いよ」

「・・・いや、オレ、停学謹慎中なんだけど・・・」

「変装でもして来いって。

オレがオマエの笑顔を取り戻してやるよ!

って、ちょっとクサいか。

絶対来いよ。じゃあな」

俊介は僕をなんとか励まそうとしているのが分かった。

いまだ麗華のことが頭から離れない僕は、

自分のことが嫌になった・・・。

いつになったらこの胸に刺さったトゲが抜け落ちる

のだろう・・・。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

其之参拾伍

僕は公園のブランコに腰かけたまま、しばらくの間

うつむき、考え込んでいた。

その後、今まで赤味がかっていた夕焼けは、

薄暗い闇雲に包まれ、やがては雨を降らせた。

僕は傘もささずに、その雨にただ打たれていた。

それはまるで、僕の痛みをキレイに

洗い流してしまいたいがためのようでもあった。

-------------------------------------------

「瑞樹さん!どうしたんですか!?

ズブ濡れですよ・・・」

そう言って、赤い傘を手にした女の子が

僕に近寄ってきた。

藍ちゃんだ。

僕は、あの後つい、藍ちゃんにメールして、

この公園に呼び出してしまったんだ・・・。

近寄ってきた藍ちゃんを、僕は間もなくギュッと

引きよせ、そのまま強く抱きしめた・・・・。

「・・・瑞樹さん・・・・」

藍ちゃんは、僕に何があったのかを漠然と

気が付いたようで、何も言わずそのまま僕を

抱きしめ返してくれた。

僕はなんて、卑怯な人間なんだろう・・・

一度は引き離そうとした女の子を、自分が傷付いたから

といって、その傷を癒してもらいたいがため、

利用してしまっているようなものだ・・・。

僕はなんて、弱い男なんだろう・・・

ただ、その小さな体は、雨に冷たく震えながらも、

僕を包み込んでくれていた。

その心底に溢れるぬくもりを感じた僕は、

この華奢な肩を、この濡れた綺麗な黒髪を、

この潤んだビー玉のような瞳を、愛おしいと思ったんだ。

真っ赤な傘は持ち主を失い、そのまま僕らの横を

転がり、風に舞った。

そして、冷たい雨に打たれながら、

二人のシルエットは近づき、しばらく離れなかった・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月12日 (木)

其之参拾四

「麗華ちゃん、瑞樹くん、ちょっと」

僕と麗華は、園田に呼ばれた。

「こちら、叶絵里さん。実は僕たち、結婚すること

になったんだ。紹介しておこうと思って」

麗華は動揺し、落ち込んだ表情をしたが、それを

隠しこんだのが、僕には分かった。

「・・・そ、そうですか。店長、絵里さん、

おめでとうございます・・・」

麗華はそう言うとすかさず、僕の腕を掴んで店を出よう

とした。

「ありがとう・・・って、あれ!?

麗華ちゃん、どうしたの??」

「なんでもない・・・」

麗華は涙を隠そうとしたが、それは思わず溢れてきた。

僕は、店長に一礼して、麗華と共に店を出た。

麗華は、もちろん、園田のことを好きだという気持ちを

僕に知られてしまったと感じていた。

僕も、当然、それが分かっていたから、帰りの道中は、

なんともいえぬ雰囲気のまま、二人共、

口を開かなかった。

-------------------------------------------

そして公園まで戻ってくると、麗華は誰が見たって

作り笑いと分かるような笑顔を僕に見せ、

思い出したように言った。

「あ。そういえば、沢村くん、話しがあるって

言ってたよね」

「・・・うん・・・ああ・・・・」

僕は、覚悟を決めた。

「オレ、藤崎さんのことが好きなんだ。

あの日逢って以来ずっと、君の事で頭の中がいっぱいに

なっちゃってさ・・・

今日はそれを言おうと思ってたんだ」

ついに言ってしまった。

心臓が破裂しそうなほどに高鳴る僕の鼓動は

彼女にも聞こえたかもしれない。

麗華は、涙を流しながら答えた。

「・・・・ありがと。・・・でも、ゴメンね。

私、園田店長のことが好きだったの・・・」

僕は、すかさず麗華を強く抱き寄せて言った。

「うん・・・・。さっき、分かった。

でも、あの人、結婚するんだよ。

・・・・オレじゃ、ダメかなぁ?」

少しの静寂の後、麗華は僕の腕を振りほどいた。

「・・・ゴメン。やっぱり今は考えられない・・・」

そう言って、走り去る彼女の姿を、僕は見送った・・・

なまぬるい風が僕にまとわりついたまま、

離れようとはしなかった。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年6月 7日 (土)

”キリサメブルー人物相関図”

Kirisame_soukanzu

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年6月 4日 (水)

其之参拾参

その週の日曜日が訪れた。

停学中で、本当は自宅謹慎していないといけない

身だったけど、僕は麗華に会いに、

約束をしていた、あの公園へと向かった。

-----------------------------------------------

「よお!」

「あ、沢村くん、ゴメンね・・・

私のせいで・・・」

麗華は、少し涙ぐんで僕に謝ってきた。

「いや、いいんだよ・・・

オレが勝手にやっただけのことだから

・・・でも、おかげで、ギターを練習する時間が

出来たよ・・・はは」

「グスッ・・・あは・・・・そうだね」

麗華は涙を貯めながらも、笑顔をみせてくれた。

「しかし、ヒドいな・・・もう長いの?」

「・・・・うん。でも、私が耐えれば

済むことだから・・・」

「だめだって。そんなこと言ってちゃ・・・

今度また、何かあったらオレが駆けつけてやるよ」

「・・・ううん。いいの。沢村くんに迷惑かけちゃうだけ

だもん」

「迷惑なんかじゃないよ。オレの先生じゃん。

今度はオレが藤崎さんに恩を返さなきゃ、だろ?」

「・・・うん・・・・ありがと」

「実はさ、今日はちょっと話があって・・・・」

僕はついに、切り出そうとした。

「・・・・あ、ちょっといいかな?」

麗華に話の腰を折られてしまった。

「実は、スウィンドルの新譜買いたいんだ。

BLUE STEPSに買いに行きたいんだけど、

それからじゃダメかなあ?」

「・・・ああ、スウィンドルね・・・・

うん、いいよ。別に急ぎはしないし・・・」

「ありがと。じゃあ、いこ!」

麗華は僕にいつも見せてくれる笑顔をようやく

完全に取り戻してくれたようだ。

この笑顔を曇らすモノから僕は彼女を守りたい、

そう思えた。

僕らは、自転車に乗って駅前に向かった。

-----------------------------------------------

「お。麗華ちゃーん!!」

その道中で、向井大輔と鈴木恵に会った。

「あ、こんにちわ」

「今日は、どうしたの?」

「あ、これから、CD買いに行こうと思って・・・」

「ああ、そうか。スウィンドルのアルバムが出てたっけ」

「うん。私、ハマってて・・・」

「・・・・そっか。で、そこの彼は?」

大輔は、僕に手を向けて言った。

「あ、同じ学校の沢村瑞樹くん」

「沢村くんか、こんにちわ。はじめまして。

向井大輔です。こっちが、鈴木恵」

「こんにちわ。鈴木です」

「あ、こんにちわ。沢村瑞樹です。はじめまして」

「沢村くん、最近、ギター始めたんだよ。

いずれ、ストリートデビューすると思うから、

よろしくね」

麗華は、満面の笑顔を二人に見せた。

「へー。じゃあ、そん時は聴かせてもらうよ」

大輔は麗華を、妹を見るような目で見ているのが

僕にも分かった。

そこで、しばらく話しをして、二人とは別れ、

僕らは、また駅のほうへと向かった。

----------------------------------------------

「ねえ。あのコじゃない?麗華ちゃんの言ってた、

好きな人って」

恵は、大輔に向かって興味深そうに言った。

「ああ、そうかもな。今まで、麗華ちゃんは、オレらに

元気よく、笑顔を見せてくれてたけど、

どこか影が見えたんだよな・・・・

それが、彼の前では違ってたように見えたよ」

「うん。私もそう思うな・・・・。

あの二人、うまくいくといいね」

「ああ、そうだな。・・・

あ、でも、幸雄くんは・・・?」

二人は、顔を見合わせて笑った。

----------------------------------------------

「店長!こんにちわ」

「おお、麗華ちゃん、こんにちわ。

お、沢村くんも、こんにちわ」

「あ、こんにちわ」

「今日はどうしたんだい?」

園田は、麗華に優しく問いかけた。

BLUE STEPSの店内は、お世辞にも客が多いとは

いえなかった。

すこしヒマそうにしていたのかもしれない。

「スウィンドル、まだあるかなあ?」

「ああ、うん。まだあるよ。そういや、麗華ちゃん、

スウィンドルの大ファンだったもんね」

「うん。じゃあ、それ、ください」

「おお、ありがとーね」

園田は、CDを袋に入れ始めた。

その頃、僕は小物のコーナーで、ピックやカポタストを

見ていた。

「いいの、あった?」

背後から、買い物を済ませた麗華が僕に問いかけてきた。

「うん、コレとか買おうかな・・・」

そう言って、僕は麗華のほうを振り向こうとした。

その瞬間、彼女は店長の方を見て、何かに気付き、

そして、沈んだ顔を見せた・・・。

園田は、年齢からすると二十代半ばくらいの地味目な

女性と親しげに話しをしていた。

麗華は、それを見かけてしまったんだ・・・・。

僕は気付いてしまった。

麗華が、園田のことを好きだということに・・・・。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

其之参拾弐

それは、火曜日の一、二時限のあいだの休み時間

のことだった。

僕の隣のクラス。そう、麗華のいる3-Dで人だかりが

出来ていた。

「おい、おい、何やってんの?」

「ひでー!!」

周りを囲んだ生徒は、その光景を見て、思わず

口にしたが、何もせず、その場で見守っていた。

時には、嘲笑しつつ・・・。

「おい。瑞樹!ヤバイって・・・」

「ん?和也。何があったっての!?」

「藤崎だって」

「え?どうしたんだ??」

「藤崎が隣のクラスで、5,6人の女子に

暴行されてるらしいぞ」

「なに!??」

僕は慌てて教室を飛び出した。

3-Dの教室のドアの前に出来た野次馬連中を

掻き分け、僕はその光景を目にした。

麗華が5人の女子生徒に蹴りを繰り返されていた。

「おめぇー、ウゼーよ!」

「マジ消えろって!!」

「オトコと話すなんて十年早えーんだよ!!」

麗華は、蹴られても蹴られても、それを

耐え忍んでいた・・・。

「おい!!!」

その光景を目の当たりにした僕は、そこに駆け寄り、

暴行を加えていた一人の女生徒の頬を

張った・・・・。

瞬間、その女生徒はその場に座り込み、

泣き出してしまった。

場は騒然とし、その騒ぎを聞きつけた3-Dの担任、

有村を含む三人の先生が現場に駆けつけた。

そして、僕は先生に掴まれ、職員室に連れて

行かれてしまった。

------------------------------------------------

職員室では、担任の井上が僕を見てこう言った。

「また、お前か・・・・。いったい、どうしたいんだ?」

「いや、オレは・・・・」

僕は反論しようとしたが、聞き入れてもらえなかった。

僕は責め立てられる言葉の矢を防ぐこともできず、

うつむいてしまった。

ガラガラガラ・・・・・・・・・・・

すると、突然、職員室のドアを開ける音が聞こえた。

「先生!沢村は悪くないんです。隣のクラスの女生徒が

藤崎って生徒をいじめていたからなんです」

和也だ。助かった・・・・。

僕は、そう安堵した。

そして、和也は、ことの成り行きを井上に説明した。

「そうか・・・・。でも、手を出したことには

間違いないな?」

「・・・・・あ。はい・・・・」

僕は正直に答えた。

「そうか・・・。処分は追って、するだろうから、

とりあえず教室に戻れ」

井上は、そう言うと、難しい顔をして、

僕らに教室に戻るよう、手を振った。

「・・・・・やっちまったな」

「・・ああ。・・・つい・・・」

「さすがに、殴っちゃ、まずかったな・・・

まあ、いじめがあったのは事実だから、

軽減されるだろうけど、停学は食らうかもな」

「・・・・うん。・・・覚悟はしてる」

案の定、僕は2週間の停学を言い渡された・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年5月 | トップページ | 2008年8月 »