其之四拾壱
「みんなー、買ってきたよー」
そう言って、腕に缶ジュースを抱えながら藍ちゃんが
部屋に入ってきた。
「お、ありがとー」
「気が利くねー」
「瑞樹、いい彼女もって幸せだねぇ」
口々に皆が藍ちゃんを褒めているものだから
なぜか僕もこそばゆい感じがした。
「そういや、瑞樹、ここはこんな感じだったっけ?」
そう言いながら、俊介は、エレキギターをつまびいた。
軽快なフレーズが室内に響いた。
ここは、学校から近いところにある、練習スタジオ。
なぜ、こんなことをやってるかって?
それは、数日前のこと。
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「瑞樹ー!バンドやろうぜ」
そう言いながら、スマイリーは僕の机に駆けて来た。
「え?急にどうしたん?」
「そりゃ、オマエ、モテるからに決まってんだろ」
「そ、そうか・・・・な?」
「って、そうじゃなくて、皆で思い出作りたいってのが
ホントなんだけどな。文化祭が間もないじゃん。
オレ、実は従兄弟がドラムやってて、多少なら
叩けるんだ」
「へえー・・・意外」
スマイリーにそんな特技があったなんて。
「で、俊介も、バンドやってるから、
ギター弾けるっしょ。和也も、器用だから
少し練習すればベースくらいできるだろ。
・・・・・・で、瑞樹、ヴォーカルな」
「え?」
「いや、オレらん中じゃ、一番歌上手いじゃん。
そりゃ、オレがやりたいのはヤマヤマだがな」
「あ、・・・ああ・・・・オレでいいの?
あれ?でも、谷本は?」
「ああ、アイツは、・・・・どうするかなあ・・・」
僕とスマイリーは、谷本のクラスに向かった。
「お、おい。アレ・・・・」
そう言ってスマイリーが指差した先には、
谷本が女の子と談笑してるようだった・・・
あ、その女の子って、陽子ちゃんじゃん・・・
どうやら、谷本はその後、陽子ちゃんと
隠れて何度かコンタクトをとり、
かなりいい感じになっているらしかった。
それを見たスマイリーは正直、とまどっていたのが
分かった。
その後、谷本に話しかけたら、
あいかわらずの軽い調子で
「おお、やる、やる・・・・できることがあるなら
なんでもやらせてくれよ」
と言ってきた。
「ああ、それじゃ、また伝えに来るよ」
そう言って、僕らはその場から離れた。
スマイリーはその道中、谷本について
しきりにグチっていた・・・
まあ、たしかに全然、僕らは知らなかったことなので
驚きはしたんだけど・・・。
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その後、俊介と和也の所に行き、バンドのことを
告げた。
「ああ、いいよ。やろうぜ。実はあの大会で
足をやっちまって、全然ヒマしてたとこなんだ」
俊介はかなり乗り気でOKサインを出した。
和也は、「特に断る理由もないし」と照れくさそうに
言ってはいたが、ホントは少し嬉しそうだったことに
僕は気付いた。
いつもクールにこなしていた彼だが、
実は一瞬表情に緩みができるんだ。
それに気付いたのは僕だけだろうか。
そしてなにより嬉しかったのは
ホントは、この僕だったんだ。
みんなとこうしてひとつのことに向かえるってのが
僕にとっては久しぶりなことで貴重なことだったんだ。
こうして、僕らの文化祭バンドプロジェクトが
発足したんだ。
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